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2010年1月末に休止。ありがとうございました。
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▽前回までのあらすじ
康孝は応援されることの嬉しさを理解し、
結果はともかく人間的に少し成長したのであった。

▽登場人物紹介
中島康孝(ナカジマ ヤスタカ)
└ 主人公。あだ名はヤス。
中島友恵(ナカジマ トモエ)
└ 康孝の双子の妹として下界に潜り込んだ人助けの神の使い
大西寺巫女(オオニシ ジミコ)
└ 助っ人部の地味な女の子。


人助けの男 第16話「中島兄妹のお寺探訪」



 新入部員募集の張り紙を張った直後、世間はG・W(ゴールデンウィーク)に突入し、うちの高校も5連休となった。そういうことで、今のところ新入部員は入っていなかった。

 しかしG・Wと言っても、うちはどこに出かけもせず、ゆったりとした休日を送っていた。父さんはまた海外出張なので家族揃って旅行ということもできないし、祖父母も両方とも既に他界しているので親の実家に出掛けることも無かった。それにこのシーズンは高速道路とか混むし、無理に出掛ける必要は無いと思うんだよなぁ。まぁ、うちに車は無いんだけど。母さんも免許持ってないし。
「康孝~。今日が何の日かわかってるの?」
 突然友恵がこんなことを言い出した。
「何の日かって・・・・・、今日、5月6日は・・・・5月3日の憲法記念日の振り替え休日だろ?」
「そういうことじゃなくって・・・・、G・W最終日なのよ!明日からまた学校!」
「あぁ、そういうことな。今日は夜更かしできねーってことね。」
「もう・・・・どこまで馬鹿なのよ!せっかくのG・Wなのにどこにも出掛けないつもり!?」
「G・Wは逃げないよ。また来年も来るさ。」
「あんたね~・・・・、あたしの気持ちも汲みなさいよ。来年はこの〝下〟の世界にいないかも知れないのよ!」
 ・・・・・・・・そういえば考えたことも無かったが、いつかは友恵も〝上〟に帰る時が来るわけで・・・・。そう考えるとG・Wにどこかへ出掛けたいという気持ちも分かる気がする。「記念に~」というヤツだ。
「出掛けるっつってもどこに出掛けるんだよ。今日が最終日なら日帰りになるぞ。」
 ちなみに今の時刻は午前10時半。急げば日帰り旅行も可能だろう。
「そうね~・・・・。熱海・・・・はこの時間からじゃ無理ね。ここは身近なところにしましょ。」
「・・・・と言うと?錆礼神社にでも行くのか?」
「あのねぇ・・・・、それは身近っていうか、ただのご近所でしょ!」
「ただのご近所って・・・・一応徒歩30分もするんだぞ。」
「それに意味も無く神社になんて行かないわよ。人間的に言えば他宗だし。・・・・・・あ!」
「なんか思いついたのか?」
「たしか寺巫女ちゃんの家ってお寺さんよね?」
「あぁ・・・・なんかいつかの登場人物紹介で書いてあったな・・・・。」
「はいはい、メタ発言しないの。しかもHPだけ見てる人には理解できないから、それ。」
「ごめんなさーい。・・・・・で、なんだ?まさか大西さんの家にお邪魔しようって訳じゃなかろうな。」
「ここまで来たらもう、そのまさかしかないわよ。行ってみましょーよ!」
 なんでG・Wに同じクラス(に新学年からなった)女子の家に遊びにいかなきゃならないんだ。たしかに同じ部活だし、接点はあるほうだが・・・・。
「連絡はどうするんだよ。ってか場所知ってんのか?」
「同じ部活の友達なら全員連絡先控えてるけど・・・・。あんた部長なのに知らないわけ?」
「実際、副部長のお前が実権握ってるだろうが・・・・・・。」

 大西さんのお寺は、ここ活尾武市の隣の宇芽母(ウメボ)市にあるらしい。友恵が電話をしたところ、来ても良いと言われたらしく今から行くことになった。
 いつも通学に使う私鉄活尾武線活尾武市しか通ってないので、活尾武市の中心、丘科町の丘科駅から私鉄梅活線に乗り換えなくてはならない。
「いつも学校行く時は丘科駅で降りちゃうから、なんか新鮮よね~。」
 ニコニコしている友恵。笑顔の女の子というのは、例え容姿が中の下であっても少し可愛いと思わせる物がある。だが確か俺以外の人は友恵が美人に見えてるはずなので、美人の笑顔というものが見れなくてちょっと悔しい。まぁ、それが友恵と言われると微妙なのだが・・・・。

 なんだかんだ考えを廻らせているうちに、目的の駅に到着した。
「え~と、この近くよね。とうざいじ・・・・で良いのかしら。」
「何々・・・・、東西寺?〝とうざいじ〟か〝とうざいでら〟じゃないか?」
「そうよね。・・・・あ、そこかしら。」
 友恵が指をさす方には結構大きいお寺が建っていた。
「結構でかいよなぁ、ここ。本当にここか?」
「あんた、ちょっと失礼じゃない?まぁ訊ねてみればわかるわよ。あ、あっちの門にインターフォンが・・・・。」
 ≪ピーンポーン≫
「はい・・・・、あっ、副部長!あと、中島君も。今行くね。」
 恐らくカメラ付きインターフォンだろう。というか、こちらは一言も喋ってないのでそれしかない。ってか俺は〝あと〟ですか。まぁ、性別の差があるし、友恵よりも距離を取って接されるのは当たり前なんだけど。
「いらっしゃい、ひがしにしでらへ。」
 大西さんが木の門を開けて対応する。
「ごめんね~、突然来ちゃって!」
「やあ、大西さん・・・・・・って今なんて言った?」
「えっ?いらっしゃい・・・・しか言ってないけど・・・・」
 こういう指摘をした場合、必ずといって言いほど少し的の外れた答えが返ってくる。大西さんも例外ではないようだ。
「いやいやいや、そこじゃなくて。いらっしゃい、のあとに言ったほうだけど・・・・。」
「あっ、うん・・・。ひがしにしでらとうざいじじゃないの。」
「ちょ、東西寺って書いてひがしにしでらって読むのか!?」
「うん。ほらっ・・・あの有名な清水寺しみずでらとは読まないでしょ?」
「それとはワケが違うような・・・・・・」
「いいじゃない、お寺の名前なんて。それより、早く入りましょっ!」
「どうぞどうぞ~。」
 なんか妙にワクワクしてんなぁ、友恵のヤツ・・・・。大西さんも周りに俺たち以外の人がいないせいか結構喋っている。少数だと良く喋るタイプだったんだろう。
「2人とも、お昼・・・・まだだよね?よかったらうちで食べる?」
「食べる食べる!康孝も食べるわよね?」
「え?ああ・・・・、大西さんが良いって言うんなら頂くとするよ。」
 やはり友恵は妙にはしゃいでいる。G・Wに遊びに出掛けたのがそんなに嬉しいんだろうか。

「いらっしゃい。もうみっちゃんのお友達が来るなんてお母さん嬉しくって・・・・」
 門から入り、本堂の方へ行くと大西さんのお母さんが出迎えてくれた。
「みっちゃん・・・・って、大西さんのこと?」
「う、うん。ほら・・・、じみこ だから、ね。」
「お母さんはねぇ、反対したのよ。みっちゃんの名前。でもね、お父さんが勝手につけちゃって・・・・。生まれた時からお寺の巫女にする予定だったからって、安直過ぎだと思うのよ~。」
「お母さん!恥ずかしいからその話しないでよぉ・・・・。」
 お寺の巫女で、そのまま寺巫女とは、いくらなんでも安直過ぎる。なんつー父親だ。
「ねぇねぇ、あたしも今度からみっちゃんって呼んでいい?」
「う、良いけど・・・・名前の由来は誰にも言わないでね・・・・!中島君も!」
「あたしは言うなって言われたことは言わないから安心して。康孝は別として。」
「おいおい、まるで俺が口軽男みたいじゃないか。俺は口堅いんだぞ、これでも。他言無用の約束は意地でも守る主義なんだよ。」
「それなら良いんだけど・・・・、お母さんは簡単に喋りすぎだよっ!もう!」
 普段出さないような大きい声も母親に向かっては普通に出す大西さん。いや、これが普段の大西さんで、学校ではあまり目立たないようにしているのかもしれない。
「ごめんね、お母さん嬉しくってつい口が滑っちゃったのよ。それで中島さんと中島君?兄妹なんですってね。仲良いわね~。」
「仲良いって、康孝。」
「なぜそれを俺に振る。」
「うちの子は言うほど仲良くなくってね~・・・・。あら?もうこんな時間!早く昼食作らないと・・・・。じゃあごゆっくりどうぞ~。」
 言うだけ言って大西さんのお母さんはどこかへ行ってしまった。まぁ、恐らく台所だろう。
「ごめんね、変なお母さんで・・・・。」
「あはは~、うちのお母さんもあんなだから気にしないでいいよ。」
「友恵、お前あとでシバくからな。」

「そういえば、大西さん。さっきの話だと、この寺の巫女・・・・なんだって?」
「あー、うん・・・。まだ違うけど・・・いや、もう巫女なのかなぁ・・・・。」
「あのさ、巫女って聞いたことはあるけど、どんなことする人なの?」
 Wikipedia-巫女
「詳しすぎて驚いた。さすがwikipediaね。」
 いやいや・・・・。このくだり意味あんのか?すっげーメタ発言してるんだけど。
「巫女になるってことは、このお寺で働くって事でしょ?」
「うん。でもお父さんもお母さんも強制はしないって言ってくれてるから、ちょっと迷ってるんだ・・・・。」
 大西さんの気持ちを代弁するなら、自分のやりたいこともあるが、親の助けになる巫女を選んだほうがいいのか迷っているということなんだろう。なんというか、大西さんらしい悩みだ。俺が大西さんの何を知っているのか、という話もあるが。

「お、姉貴の友達?」
 雑談しながらお寺の中を色々まわっていると、突然丸坊主の男が現れた。
「刃弟夫・・・・。あ、私の弟で刃弟夫(はでお)っていうの。」
「へぇ、はでお?珍しい名前ねぇ~。」
 姉が「じみこ」で弟が「はでお」とは、もはやギャグの領域である。この名前をつけたのは父親の方ではないかと推測する・・・・。
「ほぉ~ん、姉貴に友達できたんだ。」
 訝しげな顔で何を言うかと思ったら、突然そんなことを言ったので、俺は頭にきた。
「おい、それってどういう意味だよ。」
「なんだ?ろくに運動もしてないようなモヤシ君が。」
 相手はかなり喧嘩腰である。これはマズイ・・・・、何がマズイかって言うと、今のモヤシ君発言にブチ切れそうになったからだ。この丸米君にモヤシ呼ばわりされる筋合いなどない。だが、ここで切れてしまったら俺の生き方に反する・・・・。以前言ったと思うが、俺は険悪なムードになることや暴力的な出来事が好きじゃない。何故って格好悪いからだ。しかし、ここで引き下がったらもっと格好悪い・・・・。このジレンマに悩んでいるところだが・・・・・思わぬ仲裁が入った。
「刃弟夫・・・・!やめなさい。」
 大西さんが間を取って仲裁してきた。だが、この喧嘩腰の弟のことだ。この程度の仲裁じゃ止まらない・・・・・
「わ、わかったよ。そんなマジにならなくても・・・・。」
 と思っていたらすんなり引いた。心なしか少し怯えているようにも見える。この家は男女関係なく年上至上主義なんだろうか?その後、刃弟夫はフゥと溜息をつきながら俺の横を通り過ぎていった。
「ごめんね、中島君。あの子は昔からああだから・・・・。」
「いや、まぁ、俺はいいんだけどさ・・・・。」
 なんか気まずくなったので友恵の方に目をやると、なんかやたらキョロキョロしていた。
「友恵・・・・、挙動不審だぞ。」
「いや、あのね、今何時かなぁって思って。携帯忘れちゃってさぁ。」
 ちょっと前までこの場で一触即発の出来事があったというのに呑気なヤツだ。
「こっちの部屋に時計あるけど・・・・・、もうすぐ正午ね。」
「え!じゃあ〝笑っていいですとも!〟始まっちゃうじゃない!」
 コイツは・・・・。人のうちに遊びに来ておいてテレビ番組のこと考えてやがる・・・・。
「あ、副部長もゴルさんのファン・・・・!?」
「いいよねぇ、ゴルさん。面白すぎるよねぇ~。」
「うんうん。いいよねゴルさん。」
 ゴルさんというのは・・・・・以前説明したような気がするので割愛する。
 しかし何故、いちタレントのゴルさんがこんなにも中高生(しかも女子)の人気を鷲掴んでいるんだろうか。正直、高校男児の俺はゴルさんにあんまり魅力を感じない。大体、語尾に「~ですとも」を付けすぎである。キャラ作りなんだろうが、それが盛大に受けてしまっているのだろうか・・・・・。

 それから大西さんのお母さんが作った昼飯(カレー)を食べながら、3人でテレビを見ることになったが・・・・。
≪また明日も、見てくれるかな≫
「「いいですとも~!」」
 友恵と大西さん、二人揃ってテレビに返答。まさかここまで来て見るとは思わなかった。
「あれ・・・、中島君は〝いいですとも〟しないの・・・・?」
「康孝はね、ノリ悪いから。」
「いやいやいやいや、ノリ良いとか悪いじゃなくてさ・・・・、テレビに返答ってどうよ。」
「た、確かに普通は変だけど・・・・、〝いいですとも〟は別だよね・・・!」
「うんうん、わかるわかる。」
「いや、全然わかんないんだけど。」

 その一言が大西さんのファン魂に火をつけたらしく、その後、約3時間ほどゴルさんとそのゴルさんの決め台詞〝いいですとも〟のよさについてレクチャーされた。もうなんと言って良いのかわからないが、今日は大西さんの意外すぎる一面を見れまくったので個人的には満足してる・・・・・満足・・・・満足してますとも!

≪ゴルさんの良さを少し理解してしまった康孝であった。≫

  >>第17話に続く                                               
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