2010年1月末に休止。ありがとうございました。
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▽主要登場人物紹介
中島康孝(ナカジマヤスタカ)
└ ひょんなことから人助けをしなければならなくなったこのお話の主人公。あだ名はヤス。
ところで、ひょんなことからの「ひょん」ってなに。
中島友恵(ナカジマトモエ)
└ どこからかやってきた人助けの神の使い。康孝の双子の妹として現世に潜伏する。
容姿は康孝曰く「中の下」らしい。
中島康孝(ナカジマヤスタカ)
└ ひょんなことから人助けをしなければならなくなったこのお話の主人公。あだ名はヤス。
ところで、ひょんなことからの「ひょん」ってなに。
中島友恵(ナカジマトモエ)
└ どこからかやってきた人助けの神の使い。康孝の双子の妹として現世に潜伏する。
容姿は康孝曰く「中の下」らしい。
人助けの男 第4話「初詣初幽霊」
大晦日が過ぎ、世間はお正月ムード。
かくいう俺も朝食のお餅をパクついてる真っただ中だ。
そんな時に〝ピーンポーン〟と家のチャイムが鳴る。
「は~い。」
ドタバタと母さんが玄関に向かった。
「ねぇ、康孝。誰が訪ねて来たと思う?あたしは宅急便に一票。」
「バカ、こんな正月に宅急便来ると思うか?」
「じゃああんたは誰だと思うのよ。」
「うーん・・・、父さんかな。正月には帰ってくるって言ってたし。」
うちの父さんは海外出張が多くてあまり家にいないのだ。
現に友恵が来てから父さんは一度も帰ってきていないので、こいつの存在を知らない。
「あ、そう。じゃあ記憶操作の準備しておかなくちゃね~。」
なにか手からバチバチするエフェクトを出していたが、見なかったことにする・・。
「康孝ちゃん、お友達よ~。」
母さんが戻ってきて俺を呼んだ。
「俺の友達か・・。それにしちゃ呼ぶのが遅かったな。」
足早に玄関へ向かうとそこには正月からヘラヘラ笑ってる柳沢が。
「よう!ヤス!あけおめ!!」
「おーおー、あけおめあけおめ。」
「しかし時が過ぎるのは早いな!前回は12月の始めの話じゃなかったか?」
「作者が時間軸を現実に追いつかせようとがんばってんだよ・・。で、何の用?」
「正月の朝に訪ねてくると言ったらアレしかないだろ!」
「なんだ?まさか初詣とか言うんじゃないだろうな。」
「そのまさかよ!行こうぜ!友恵ちゃんも一緒にな!」
まあそんな予感はしていたが、やはり友恵目当てだ。
「しかしお前の家からここまで遠いだろ。ご苦労なこった。」
「なあに、たったの4駅だぜ!恋愛にはそれぐらいの障害が無きゃぁなあ。」
「お前、いつ友恵と恋仲になったんだよ・・・」
「・・・で、なんであたしが初詣行かなきゃなんないのよ。」
初詣に誘うと友恵はブーたれ始めた。
「わざわざ柳沢が家まで来たんだからさ。いいじゃんか。」
「そうだぜ!どっちかというとヤス30%、友恵ちゃん70%目的だから、俺!」
俺が0%ではないところに柳沢なりのやさしさが見える。だがせめて40%くれよ・・。
「・・・まぁ行ってもいいけどさ。お参りはしないよ?」
「え?なんでだよ。」
「いいじゃんいいじゃん!行ってもいいなら今すぐ行こうぜ!」
疑問を問いかけるもすぐに柳沢が口を挟み、そのまま出かけることになった。
「なあヤス。お前の母さんいくつだ?」
家を出た瞬間、柳沢が問いかけてきた。
「39だよ39。若いだろ?」
母親が若いというのは俺が唯一出来る家族自慢だ。
なんでも出来ちゃった結婚だったらしいが、そんなこと柳沢には言わない。
「マジかよ!若奥様じゃねえか!」
「へぇ~、あたしも初み・・・」
〝シッ!お前がそういうこと言っちゃダメだろ・・!〟
友恵が立場的におかしいことを言おうとしたので小声で止めた。
「この前ヤスんち行った時はてっきりお前のお姉さんかと思ってたぜ。」
「いや、いくらなんでもそれは無理があると思うぞ・・。」
確かに10歳ぐらい年齢詐称しても大丈夫な見た目だが、お姉さんはさすがに無い。
「いいなー。うちの母ちゃんなんてもうすぐ50だぜ。」
「誰も聞いてないわよ。」
「そんな冷たいこと言わないでよ友恵ちゃん!」
確かに今の発言は冷たすぎる。
柳沢・・・悪い事は言わないからこの女を狙うのはやめたほうがいいぞ・・・。
近所のそれなりに有名な神社に行くと、人があふれていた。
「はぁ~、すげえ人混みだな。普段初詣なんか行かないからこういうの初めてだ。」
「俺なんか毎年初詣行ってるぜ!一人でな!」
なんか今柳沢がさみしい事を言ったような気がするが、思いやりを込めてスルーしてやろう。
「あたし人混み嫌いなんだけどなぁ~。」
「ここまで来てワガママ言うなよ。なぁ、柳沢。」
「友恵ちゃん・・・、他の神社に行こうか!」
「ちょっ、おい!そりゃないだろ!」
「すまんヤス・・・、俺は友情より・・愛情を取るぜ・・!許せ!」
ここまで友恵一筋だと思わず柳沢を応援したくなってしまう。
だがその恋愛は実らないのが目に見えているため、柳沢が哀れで仕方ない。
「じゃあどこの神社に行くっていうんだよ。」
「確か来る途中に寂れた神社があったろ?そこ行こうぜ!」
「あ、それ賛成♥」
さっきお参りはしないとか言ってたくせに、気軽に賛成する友恵。
まぁ、柳沢に賛成するほど人混みが嫌いなんだろうけど・・・。
そして寂れた神社にやってきた。
「錆礼神社っていうのね、ここ。名前からして寂れてるじゃない。」
「ちらほらだけど、一応参拝客はいるみたいだな。」
「じゃあ早速お参りしようぜ!」
お賽銭に10円を投げ入れて鈴を鳴らした。
「そういや、なんで友恵はお参りしないんだ?」
先程、柳沢に阻まれた疑問をもう一度する。
〝あたしはこれでも神の使いなのよ?他の神様崇拝しちゃダメでしょーが!〟
柳沢に聞こえないよう、小声で返してきた。
「なるほどね。でも別に崇拝してるわけじゃないんだけど・・。」
「お!おみくじ引こうぜおみくじ!」
柳沢がおみくじの自動販売機を指差した。一回百円と張り紙が貼ってある。
「お金払ってまで大凶を引きたいなんて、柳沢君って物好きね。」
「ちょっ、なんで大凶って決めつけてんのさ!でもそのギャグ面白いよ!」
必死に友恵の好感度を上げようとしている柳沢を見ていると泣けてくる。
やることも一通り終えて神社の敷地内をウロウロしていると、突然友恵が言った。
「待って、あそこに何かいるわ・・。」
友恵が指差す方向には石碑がポツンと一つあるだけだ。
「何かいる・・・って何?生き物か?」
「・・・あっ!」
何か発見したように友恵が声を上げたが、俺は何も見えない。
柳沢も明らかに頭から『?』を出している。
「どうしたんだよ。何もいないぞ?」
今いる所は神社の建物の裏で人は俺たち以外見当たらないし、気配もしない。
「なぁ、ヤス。友恵ちゃんはいったい何を見てるんだ?」
「さぁ・・、何かを見てるんじゃないか?」
数十秒の沈黙の後、何か納得した様子で友恵が言った。
「ちょっと二人とも、そこ見てて。」
友恵は何もない宙を指差した。言われるがまま俺たちはそこを見る。
するとうっすらした影が現れ、それが次第に色濃く見えるようになってきた・・!
「な、なんだ!」
驚く柳沢。しかし驚くのも無理はない。
宙に現れた影は刀を持ったサムライの形をしていたからだ。
「友恵、これはなんなんだ・・いったい・・。」
「この人ね、なんか自縛霊なんだって。」
「ゆ、幽霊!?」
幽霊は苦手なのか、柳沢は冷汗をかいていた。
そして突然その幽霊が話しかけてきた。
(拙者、生前はしがない侍をしていたものでござる。しかしそれしか記憶がないのだ。どうして自縛霊になったのかすら覚えておらん。)
幽霊の声は頭に響くように聞こえてきた。
「で、それがどうしたんですか、幽霊さん・・。」
恐る恐る話しかけると幽霊は言葉を返してきた。
(喋りかけずとも、拙者に伝えたいことを思うだけで言葉は伝わるぞ。・・・詰問の答えだが、この友恵殿が拙者の縛を解いてくれると言うのだ。)
「な、なんでそんなことするの、友恵・・。」
「え?んー。人助けの協力者になってもらうのよ。」
(その通り。何をするのか知らないが拙者はこの縛を解いてくれるのなら、出来る限り協力することを誓おう。)
「ね?役に立ちそうでしょ?」
「は、はぁ・・・。」
幽霊が人助けにどう役立つのか甚だ疑問だ・・・。
「え、えーと。俺置いてけぼりなんだけど。」
柳沢がいつもと違って小さな声で言った。
「俺もよくわからん・・。いったいどうするんだよ、縛を解くって!」
「つまりね、この侍さんは石碑に縛られてこの場から動けなくなってるのよ。だからその縛りの対象を他の物に変えてあげるわけ。」
「友恵ちゃん、そんなことができるのかい!?」
吃驚仰天といった面持ちで柳沢が声を上げた。
「あちゃー、しまった。」
友恵がそう言った直後、柳沢がぼんやりした顔で辺りを見回し始めた。
「や、柳沢に何したんだ・・?」
「都合の悪い部分の記憶を消しただけよ。」
そんな話をしていたら、いつの間にか幽霊が消えていた。
「あれ?幽霊がいなくなってるけど・・。」
「見えなくなってるだけよ。さっきはあんたたちにも見えるように姿を現してただけ。」
幽霊はそんなこともできるのか・・・。というか友恵は見えない状態でも見えてるのか?
「じゃあ、帰りましょ。」
「え、ちょっと待て。自縛霊の件は・・?」
「もう縛りは解いたけど・・・?」
いつ解いたんだ・・?そんな早業でできることなのか・・。
「あれ、俺寝てた!?幽霊は!?」
柳沢がハッとした顔で俺たちに話しかける。どうやら幽霊の件は覚えてるらしい。
「あの侍の霊なら康孝の後ろにいるわよ。今は見えないけど。」
・・・ちょっと待て。俺の後ろにいるだって?
「なあ友恵。さっき霊を縛る物を石碑じゃない別の物に変えるって言ってたよな。」
「言ったわね。」
「もしかしてさ・・・、それ俺?」
「うん。」
「『うん。』じゃねえよ!それって幽霊が俺にとり憑いたってことじゃないか!」
(よろしくでござる、康孝殿!)
「よろしくじゃねえええええええええええええ!!!!!」
「なんか、すげー蚊帳の外なんだけど、俺。」
≪―――――後半、置いてけぼりな柳沢であった。≫
>>第5話に続く
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